雑情報 (36-7)
要旨
1.スキャンスナップS1500用フィードローラー、排出ローラーの交換 1)フィード/排出ローラーが劣化した * スキャンスナップS1500をトラブルなく11年間使い続けた。 * 最近、フィード/排出ローラー劣化しべたついて紙送りができなくなった。 * 上下部のフィード/排出ローラーいずれも紙のインクで黒く変色。ローラー自体も劣化しべとつくほか、色も透明から黄色に変わっていた。 2)採用しなかったフィード/排出ローラーの交換方法 * スキャンスナップを相当程度分解した後、フィード/排出ローラーをはめ込む軸を取り外している。次にシリコンチューブを軸にはめ込み、歯車などの位置決め調整しながら再度組み立てる。 * 分解から再組立てまで4時間を要しており、歯車の位置調整、電気配線、コネクタの接続などの工程もあるので素人が容易に手出しするのは難しいと感じる。 3)採用したフィード/排出ローラーのみを交換する方法 * 最初に既存の劣化しベタベタしているローラーをカッターなどで取り除く。 * 次に、購入したシリコンチューブを所定の長さに輪切りした後、ローラーをフィード/排出ローラー軸にはめ込むため1か所に縦割りにカットを入れる。 * あとは、ローラーをフィード/排出ローラー軸へはめ込めば完成。 2.実施したフィード/排出ローラーのローラー交換 * ローラーに使用するシリコンチューブ6mm×12mm 長さ1mを購入。 * 既存のローラーはローラー軸にくっついており、ドライバー、カッター、ニッパーなどで少しずつ除去。 * 除去の際にスキャナーの最重要部のガラス面、超音波センサーを傷つけないよう、事前にそれらをマスキングテープで保護しておくこと。 * 購入したシリコンチューブ(6mm×12mm)はローラー軸に合う寸法に輪切り フィードローラー用:2.4cm×2個、排出ローラー用 :2.6cm×2個 * 次にローラー軸にはめ込めるよう輪切りしたローラーに一か所切り込みを入れる。 * 最初、軸へのローラーのはめ込みはうまくできないが、数回やると要領がわかる。 * ローラーを取り付け後、スキャンスナップの電源を入れ、ADFカバーを開けた状態でScanボタンを押しローラーの回転状況などを確認する。 * 7回Scanボタンを押すとローラーが1回転したことになるので、ローラーに異常がなければ完了。 * フィード/排出ローラーの交換に要した費用は1,200円、かかった時間は1時間。 3.フィード/排出ローラーを交換した後の作動状況と結論 * ローラー交換後、2回に分け2,000枚以上スキャンしたがトラブルは皆無。 * スキャンスナップのフィード/排出ローラーにシリコンチューブに切り込みを入れ軸にはめ込む方法は簡単、安価にできる交換方法。 * 自分で交換可能、かつ1,200円の費用と1時間でできるので試す価値がある。 4.ローラー交換後4か月経過したがトラブルは皆無(2022年3月5日追記) * ローラー交換後4,000枚スキャンしたが、スキャンスナップ本体、スキャンした画像いずれにもトラブルはまったくなかった。 * 2つ割りにカットしたローラーはスキャンスナップの延命化に寄与できる。 * ローラーの経年劣化によるべたつきでスキャンスナップが使えなくて困っているユーザは、この方法を試してみよう。 5.ローラー交換後、約2年経過したがトラブルなし(2023年9月18日追記) * 2つ割りのローラーに交換したことにより購入後13年間、機器、電気品のトラブルなく使い続けている。 * 軸にはめ込んだローラーは手で触ると軽く回転でき、ローラーのカット部(スリット)が見える。カット部が広がる、軸から抜け落ちることはなかった。 * 今後もこのまま使い続けられるだろう。 |
1.スキャンスナップS1500用フィードローラー、排出ローラーの交換
1)フィードローラーが劣化した
スキャンスナップS1500を本体、ソフト共にまったくトラブルなく11年使い続けてきた。
★人生と生活に役立つトレンディな情報マガジン 自炊(電子書籍化)の具体例、本のスキャン編 (fc2.com)、2010年10月21日
最近、消耗品リストに載っていないフィードローラーと排出ローラー(以降、フィード/排出ローラーと呼ぶ)が劣化しべたついて紙送りができなくなった。
画像1 富士通製 スキャンスナップ S1500の外観
画像2 スキャンスナップS1500のADFカバーを開けた状態
ADFカバーは持ち上げるとすぐに開けることができる
画像3 スキャンスナップ S1500を開けると上部にフィードローラー2個と下部に排出ローラー2個が見える。
画像4 スキャンスナップS1500のADFカバーを開けた外観図
フィード/排出ローラーの設置場所、大きさがわかる
★ScanSnapS1500 オペレーターガイド(取扱説明書)
P.456から外観図を引用
上下部のフィード/排出ローラーいずれも黒く変色していた。たぶん、多くの紙をスキャンしたためローラー表面に紙のインクが付いたもの。また、ローラー自体も劣化しておりべとつくほか、色も透明から黄色に変わっていた。
オペレーターガイドにはフィード/排出ローラーの交換の記載はなく、メーカへ修理、交換を依頼しないとできない。
次に自分でフィード/排出ローラーを交換できないかをネットで探した。
2)採用しなかったフィード/排出ローラーの交換方法
ネット上からスキャンスナップ(機種は様々)のフィード/排出ローラーを交換した例を見つけた。
多くはスキャンスナップを相当程度分解した後、フィード/排出ローラーをはめ込むステンレス製の軸を取り外している。次に購入した純正品に類似したシリコンチューブを軸にはめ込み、歯車などの位置決め調整しながら再度組み立てていた。
分解から再組立てまで4時間を要しており、歯車の位置調整、電気配線、コネクタの接続などの工程もあるので素人が容易に手出しするのは難しいように感じる。
★ScanSnap S500のフィードローラーの交換-p--q、2019年7月28日
★ScanSnap S1500のローラー交換 : まごころせいじつ堂 (livedoor.jp)、(2021年11月6日)
★ScanSnap S500のフィードローラーを交換しました|シロさん居ますか|note、2021年7月23日
★自炊生活は楽しい♪ >> 5年後、ローラーがダメになったので交換 - FUJITSU スキャンスナップ FI-S500のレビュー | ジグソー | レビューメディア (zigsow.jp)、2020年6月21日
しかし、上記事例はフィード/排出ローラー部の構造、ローラーの寸法、材質などの仕様がわかり、実際にフィード/排出ローラーを交換する際に大いに役に立った。
スキャンスナップを分解せずにローラーのみを交換できる方法はないかと更にネットを検索したら、素人でもうまくいけそうなサイトを探し当てた。
3)採用したフィード/排出ローラーのみを交換する方法
サイトに記載してある内容の概要は、
フィード/排出ローラー軸はそれぞれの左右にローラー(シリコンチューブ)が1個ずつ取り付けられており、ローラーの個数は合計4個。
最初に既存の劣化しベタベタしているローラーをカッターで取り除く。
次に、購入した純正品のローラーと同等のシリコンゴムチューブを所定の長さに輪切りにして4個作る。ローラーをフィード/排出ローラー軸にはめ込むため1か所に縦割りにカットを入れる。
あとは、ローラーをフィード/排出ローラー軸へはめ込めば完成。
★富士通Scansnap S510をローラー交換・修理した件 - 練馬区工務店ワンオペ営業日記 (hatenablog.com)、2021年7月2日
はめ込んだローラーは1か所をカットしているため、スキャン中にローラーが軸からずれる、外れることが懸念された。やってみないとわからないがたぶんうまくいきそう。
2.実施したフィード/排出ローラーのローラー交換
1)ローラーに使用するシリコンチューブの入手
ネット情報を参考にスキャンスナップS1500に適合するローラーとしてシリコンチューブを見つけたのでアマゾンから入手した。
ブランド:タイガーポリマー製シリコンチューブ6mm×12mm 長さ1mを購入した
画像5 シリコンチューブ6mm×12mm 長さ1m
万一、シリコンチューブがフィード/排出ローラー軸からずれたり、はがれたりした場合を想定し、専用の接着剤をチューブと一緒にアマゾンから購入した。
★Amazon | セメダイン ポリエチレン ポリプロピレン シリコーンゴム 専用接着剤 PPX 6gセット CA-522 | 瞬間接着剤 | 文房具・オフィス用品
実際、シリコンチューブはなにもしなくてもフィード/排出ローラーに密着して巻き付き、はがれることはなかったので接着剤を使うことはなかった。
実績から、接着剤は購入不要である。
画像6 シリコンチューブ用の接着剤(購入は不要)
セメダイン製ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム専用接着剤 PPX 6g
2)既存のフィード/排出ローラーをステンレス製の軸から除去
べたついたローラーはローラー軸にくっついており、そのままでははがれないので、ドライバー、カッター、ニッパーなどで少しずつ除去した。
ローラーの除去はスキャナーの最重要部のガラス面、超音波センサーの近くでの作業になる。ガラス面を傷つけるとスキャン時に線が入ったりするなどの不都合が起こるので、ガラス面、超音波センサーをマスキングテープで保護してから行うことにした。
画像7 当初、ローラーをニッパーではがしている。
作業途中で工具がガラス面を傷つけると思い、すぐにガラス面、超音波センサーにマスキングテープを張り付けた
画像8 ガラス面、超音波センサーにマスキングテープを張り付け保護
画像9 フィードローラー軸のローラーをはがしている途中
画像10 フィード/排出ローラー軸共、既存ローラーの除去を完了
フィードローラー軸はローラーを取り付ける部分がフラットであるが、排出ローラー軸は一部に段差がある。
ローラーはかなりべとついており、4カ所をはがし終えるのに15分かかった。
画像11 はがしたローラーの破片
経年変化により劣化し透明から黄に変色しべたついている
3)新規シリコンチューブの加工
購入したシリコンチューブをフィード/排出ローラー軸にはめ込めるように加工した。
最初にローラー軸に合う寸法に輪切り、次にローラー軸にはめ込めるように輪切りしたローラーに一か所に切り込みを入れる。
①シリコンチューブの輪切り
輪切りにする長さは、ネットを調べたがどこにも記載がなく、以下の寸法でカットした。
フィードローラー:2.2cm×2個
(実際の取り付け状況から0.2cm長い2.4cmにするのがよい)
排出ローラー :2.4cm×2個
(実際の取り付け状況から0.2cm長い2.6cmにするのがよい)
画像12 シリコンチューブをローラーに合わせてカット
上部:残ったシリコンチューブ
下部右:フィードローラー用のシリコンチューブ
下部左:排出ローラー用のシリコンチューブ
②輪切りしたシリコンチューブに切り込みを入れる
画像13 ローラーそれぞれにカッターで1か所切り込みを入れた
4)加工したシリコンチューブを軸に取り付け
画像14 カットしたローラーをフィード/排出ローラー軸へはめ込んだ
最初は、切り込みがあるローラーを軸へはめ込むがうまくできなかったが、数回やると要領がわかり、ローラーをローラー軸へはめ込むことができた。
ローラーの左右方向の位置は、規定と1mm程度違うが、いったんはめ込んだローラーを左右に移動させるのは難しいので、ずれたままでよしとした。
その後 スキャンスナップの電源を入れ、ADFカバーを開けた状態でScanボタンを押すとフィードローラー2個、排出ローラー2個が少し回転する。
Scanボタンを少し押してはフィード/排出ローラー軸からローラーが浮いていないか、ずれていなかを確認した。
7回Scanボタンを押すとローラーが1回転したことになるので、ローラーに異常がなければ完了。
★ScanSnapのお手入れ | ScanSnapヘルプ (fujitsu.com)
Dcansnaps1500の部品の名称、清掃の方法などを説明。
5)フィード/排出ローラーの交換に要した費用など(表1)
表1 フィード/排出ローラー交換の際に入手した物品の仕様、価格
番号 | 項目 | メーカ名、品名など | 個数 | 単価 円 | 合計 円 | 備考 |
1 | フィード/排出ローラー | タイガーポリマー製シリコンチューブ6mm×12mm 長さ1m | 1 | 1,191 | 1,191 | アマゾン |
2 | 接着剤 | セメダイン製ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム専用接着剤PPX 6g | 1 | 918 | 918 | アマゾン使用せず |
合 計 | - | - | - | 2,096 | - |
注)価格はすべて輸送費、税込金額
3.フィード/排出ローラーを交換した後の作動状況と結論
1)ローラー交換後のスキャンスナップの状況
①ローラーを交換した直後のスキャン
フィード/排出ローラーを交換した後、すぐに雑誌200枚、新聞スクラップ800枚ほどをスキャンした。
使用時のスキャンスナップの設定は以前と同じ条件とした。
スキャン時の紙送り、紙が重なってスキャン、スキャン後の画像の抜け、ゆがみ、線が入るなどの異常などはなかった。
スキャン後、フィード/排出ローラーの状態を調べたが、ローラーの切り込みが広がっていることはなく、ローラー軸からローラーがはがれる様子も見られなかった。
②ローラーを交換後1か月経過した際のスキャン
ローラーを交換してから1か月後に、約1,500枚をスキャンしたが、従来と同様のスキャンスピードで行え、紙送り、ダブってスキャンされるなどのトラブルもなかった。
スキャン後の画像なども従来と変わらなかった。
画像15 ローラー交換後2,500枚スキャンした後のフィード/排出ローラーの状況
フィード/排出ローラーともローラーを軸へはめ込むための切り込みの隙間が見える。隙間はローラー交換時とかわっていない。
2)結論
スキャンスナップS1500のフィード/排出ローラーに互換品のシリコンチューブに切り込みを入れフィード/排出ローラー軸にはめ込む方法は、簡単、安価にできる交換方法である。
長年スキャンスナップを使い続け、ローラーの劣化により使うことができなくなった場合であっても、互換ローラー(シリコンチューブ)を入手し、ローラー軸にはめ込むだけでスキャンスナップが復活できる。
古いスキャンスナップのローラー交換に10,000円以上の費用を払うなら廃棄することを選ぶユーザが多いだろう。
代わりに自分で交換可能、かつ1,200円の費用と1時間でできるのなら試す価値はある。
4.ローラー交換後4か月経過したがトラブルは皆無(2022年3月5日追記)
①ローラー交換後のスキャン枚数
ローラー交換後、従来とおり本、雑誌、新聞スクラップなどを今日まで月1回の頻度でスキャンしてきた。
1回のスキャンに処理した書籍類は、平均本2冊(300枚)、雑誌2冊(250枚)、新聞スクラップ(500枚)の合計1,050枚。
この4か月間に4回スキャンしたので
スキャンした書類の合計枚数は 4か月×1,050枚=4,200枚
②ローラー交換後のスキャン状況
ローラーを交換後、約4,000枚の書籍類をスキャンしたが、スキャン時の紙の巻き込み、送り、排出などのトラブルは一度もなく、またスキャンした画像の曲がりなどもなく、今まで通り、OCR化も行えた。
③2つ割りローラーは使用に耐えうる
上記の結果から、2つ割りにカットしたローラーを取り付けることによりスキャンスナップを使い続けられるようになった。
2つ割りのローラーに交換することは、メーカの取扱説明書、消耗品リスト、メンテナンスリストにも載っていないが、素人でもできる方法なのでスキャンスナップの延命化に寄与できる。
今まで、ローラーの経年劣化によるべたつきでスキャンスナップが使えなくて困っているユーザは、この方法を試してみよう。
5.ローラー交換後、約2年経過したがトラブルなし(2023年9月18日追記)
1)スキャンスナップの総スキャン枚数
ローラー交換時の2021年11月4日時点の総スキャン枚数340,759枚
現在、2023年9月18日の総スキャン枚数354、690枚
この期間に139,310枚をスキャンしていた。
354、690枚-340,759枚=13,931枚
月平均:13,931枚÷20カ月=696枚/月
画像16 スキャンスナップS1500の消耗品カウンター
2021年11月4日の総スキャン枚数:340,759枚
画像17 スキャンスナップS1500の消耗品カウンター
2023年9月18日時点の総スキャン枚数:354,690枚
スキャン回数は前回の想定より少ないが、2つ割りのローラーに交換したことにより購入後13年間、機器、電気品のトラブルなく使い続けている。
画像18 スキャンスナップS1500の交換した2つ割りのローラー。4個
2つ割りしたローラーの状況は、色が少し黒くなっている。新聞紙をスキャンした際にインクが付着したためである。
軸にはめ込んだローラーは手で触ると軽く回転でき、ローラーのカット部が見える。カット部が広がる、軸から抜け落ちることはなかった。
今後もこのまま使い続けられるだろう。
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Author:当仁覆面士
専 門:機械技術者